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鳥取地方裁判所米子支部 昭和30年(ワ)102号 判決

原告 杉本富義事 菅村富義

被告 国 外一名

国代理人 加藤宏

主文

被告等は連帯して原告に対し金七万参千四百弐拾八円五拾銭及びこれに対する昭和三十年八月二十八日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求は棄却する。

訴訟費用は十分しその一を原告その余を被告両名の連帯負担とする。

この判決は原告において勝訴の部分に限り金弐万円の担保を供するときは仮に執行することができる。

事実

請求の趣旨として

「被告等は原告に対し連帯して金四拾四万七千円及びこれに対する昭和三十年八月二十八日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え訴訟費用は被告等の連帯負担とする」との判決並に執行の宣言を求めた。

請求の原因として左のとおり述べた

一、被告白根は原告に対する今市簡易裁判所の和解調書の執行力ある正本に基き松江地方裁判所今市支部執行吏豆紀武雄に原告に対する有体動産の強制執行を委任し執行吏代理糸賀東市は昭和三十年八月十九日原告所有の島根県簸川郡斐川村大字阿宮山林所在松伐倒木五百十六石九四を差押え同月二十七日競売をなし訴外平次義が競落してその所有権を取得し原告はその所有権を喪失した右素材は差押に当つて材積四百石見積価格二万円とされ代金三万円で競落された

二、しかしながら右の強制執行は左の事由によつて違法である

(1)  右差押並びに競売にかかる素材の実際の材積は五百十六石九四で内用材は二百七十石本件山林現場における価格石当り九百五十円二百七十石にて二十五万六千五百円パルプ材は二百四十六石九四本件山林現場における価格石当り八百五十円二百四十六石九四にて二十万九千八百九十九円そして本件木材は全部伐採済みで内二百五十石は現場の適当な場所に集材済みであるが五百十六石九四の伐採賃石当り八十円総計四万千三百五十五円二百五十石の集材賃石当り五十円で総計一万二千五百円以上素材価格及び伐採集材賃の総計五十二万二百五十四円に相当するものである

しかるに糸賀執行吏代理は右差押物件を僅かに二万円と見積り且つ三万円というが如き不当な廉価で競売したものであるから違法である

(2)  本件差押調書には保科猶次郎が立会人としてその記名押印がなされているけれども同人は何等立会をした事実はなく従つて該調書はその点に関し虚偽の記載がなされているのであつて本件差押は立会人なくしてなされた違法がある

(3)  本件差押は昭和三十年八月十九日になされ原告に対しては普通郵便によつて同月二十四日に同月二十七日が競売期日である旨記載した差押調書謄本が発達せられた執行行為に属する執行吏の通知は民事訴訟法第五百四十一条第百七十二条により書留郵便に付してなすべきであるのに拘らず普通郵便により而もその到達後競売期日迄に僅か三日間の余裕があつただけで当時他行中の原告不知の間に競売をなした違法がある

三、被告白根は執行吏代理糸賀東市と通謀の上右二記載のごとき違法な通知手続をとつた他本件素材の見積価格及び競売価格が不当に廉価であることを知りつつ前記のごとく僅か二万円と見積り平次義をしてこれを三万円で競売させこれが不法競売をなしたものであり右違法行為につき両名間に通謀の事実がないとするも各自右違法行為について故意又は少くとも過失があつて両名の共同不法行為が存する即ち過失とは被告白根は原告が本件木材の伐採並に集材を請負わせた陰山市蔵から造材賃金未払残三万八千三百三十五円の債権譲渡を受けてこれを訴求した結果和解が成立したがその和解調書正本でもつて本件強制執行をなしたものであつて本件松材の伐採並びに集材労務賃債権だけでも三万八千余円であることを知つてをり且つ同人は木材の知識経験もあるので本件木材の価格は容易に判断し得たところであるにも拘らず過失によつて糸賀東市をして差押目的物の評価をひいてはその競売を誤らせた次第であり他方糸賀東市は木材の強制執行の経験なく全然木材の知識もないのに拘らず専門家に評価を依頼する等の手段をとらず漫然二万円と評価したというがごときことは執行吏として職務上当然なすべき注意義務を怠つた過失があるというべきである

尚仮に右両名の共同不法行為が成立しないとしても各自の不法行為が成立することは明かである

四、結局被告の白根及び執行吏代理糸賀の不法行為によつて原告は本件松材の本件競売当時の時価五十二万二百五十四円と競落代金三万円との差額四十九万二百五十四円の損害を蒙つたものであるので内金四十四万七千円の支払を求めるものである

五、尚左のとおり附陳する

(イ)  原告が本件松立木を山田本三郎より買受けたのは昭和二十八年十月頃で他に転売の目的で石数五百石とみて代金四十万円で買受け代金を完済し伐採集材をして将に搬出しようとしていたものである

(ロ)  原告が本件松立木を伐採した期間は昭和二十八年十二月より昭和二十九年三月末迄である

(ハ)  伐採後の保管方法は完全に皮剥ぎをした上一部二百五十石は本件山林内の一ケ所に集材し他は本件山林内の乾燥し易い適当な場所に乾燥させる目的で置いていた

(ニ)  被告白根が主張するごとき本件木材の腐蝕の事実はない

(ホ)  本件山林現場はその位置等よりして十石乃至数十石の多量の木材が盗難に罹るごとき場所ではない

(ヘ)  原告の伐採期限は一応経過していたが予め山林所有者保科猶次郎等の承諾があり搬出についてもトラツク着迄索道によつて搬出するので殆ど他人の所有地を通行する必要はない

又第三者所有地の使用についても右保科及び山田本三郎の斡旋によつて多額の損害金支払の必要なきものであつた

(ト)  伐採後は一年半位乾燥させるのが普通であつて原告が伐採後放置したことによつて品質が低下した事実はない仮に品質の多少の低下があつたとしても少くともパルプ材については価格下落のおそれはない〈証拠省略〉

(被告国関係)

請求の趣旨に対する答弁として

「被告国に対する原告の請求を棄却する原告と被告国との間に生じた訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求めた

請求の原因に対する答弁として左のとおり述べた

被告白根が原告主張の和解調書正本に基いてその主張の執行吏に原告に対する強制執行を委任し、執行吏代理糸賀東市が原告主張の日原告主張の山林所在の松伐倒木を差押えその主張の日競売に付し訴外平次義が競売し原告がその松伐倒木の所有権を喪失したことその松素材は右差押において材積四百石見積価格二万円とされ代金三万円で競落されたことは認めるがその余の事実は争う

本件松材はパルプ材として伐採されたものの如くで長さは七尺直径は六寸乃至八寸のものであつたが伐採後相当日時を経過していて(伐採後一年以上経過していたものと認められる)樹皮の剥取られているものはその木質部と樹皮との間に水が廻つていて容易に樹皮の剥離する状態に至つており又鉄砲虫による虫害(穴)も諸所に存しかつ伐採集積場所より自動車積(道路)まで約一粁もありその間他人所有の農地を通らなければ搬出困難な場所であつたかようなわけで本件松材は時価の低落と相俟つて石数に比して廉価に売買させざるを得なかつた次第である〈証拠省略〉

(被告白根関係)

請求の趣旨に対する答弁として

「被告白根に対する原告の請求を棄却する原告と被告白根との間に生じた訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求めた

請求の原因に対する答弁として左のとおり述べた

被告白根が原告主張の和解調書正本に基いてその主張の執行吏に対し原告に対する強制執行を委任し執行吏代理糸賀東市が原告主張の日原告所有の松素材を材積四百石見積価格二万円として差押えその主張の日に競売に付した結果代金三万円で訴外平次義が競買した事実は認めるがその余の原告主張事実は争う

本件松素材の競落価格は不当に廉価ではない

(1)  本競売物件は松素材で樹令が若い上皮剥ぎ不充分で昭和二十八年度より伐採後足掛けその間二回も梅雨を経大部虫入りとなり積材下部その他蔭地散乱の木材は腐り気味で甚しく品質悪化し従つて価格安きものである

(2)  一般に木材の価格は本件競売当時においては昭和二十八年度に比して下落していた

(3)  本件松材は出材期を経過しており所有者保科猶次郎は場合によつては今後出材期経過の理由で出材を禁止するべく又出材を許容するについては相当の損害金を要求すると言明しており又近道によつて出材するためにはその出材路に当る山林の所有者数名に通行のため多大の損害金を支払わねばならず又本道によつて迂回すれば甚長距離となりその出材費多額となり収支償わない情況であつた

(4)  本件松材は現実において数量が少なかつた即ち競売された材積は二百九十五石五斗一升であつた原告の買受けたと主張する材積との間に相当の差違のあるのは昭和二十八年度に伐採されたまま管理人なく放置せられたため盗難に罹つたためと推察せられる〈証拠省略〉

理由

被告白根が原告主張の和解調書正本に基いてその主張の執行吏に原告に対する強制執行を委任し執行吏代理糸賀東市が原告主張の日原告主張の山林所在の松伐倒木(その石数について争がある)差押えその主張の日競売に付した結果訴外平次義が競買したことその松材は右差押において材積四百石見積価格二万円とされ代金三万円で競落せられたことは当事者間に争がないところである

本件の争点は先づ右差押及び競売の対象である本件松材の材積の点である

証人菅村助次の証言(第二回)によつて成立を認めることができる甲第七号証に同証人の証言(第一、二回)証人的場克男の証言及び原告本人の供述を綜合すれば原告が昭和二十八年九月頃本件山林松立木を訴外山田本三郎より買受けた当時の石数が五百十六石九斗四升存在したことそして右は訴外陰山市蔵等が右立木を伐採皮剥ぎした賃金計算のため原告側と右陰山等が立会の上寸検した正確な数字であることが認められる

しかし本件差押競売の際の石数については正確に寸検したことはなく(証人糸賀東市の証言)証人的場克男証言も同証人は昭和三十年八月頃現認したところでは五百石位あると思つたと云うにすぎないし又証人菅村助次の証言(第一回)も俄に採用し難い他にこの石数に関する原告の主張を肯認するに足る証拠は存しない本件松材は原告主張の頃伐採されその後本件競売の頃迄一年数ケ月間現場に放置されていたことは当事者間に争のないところであるがその間右石数に変動がなかつたかというに盗難に罹つたとの点については何等の証拠はないけれども右山林現場は盗難の可能性が全くないことはなく(証人菅村助次の証言(第一回)証人的場克男の証言原告本人の供述等により認められる盗難の可能性を全く否定するが如き証人菅村助次の証言(第二回)同保科猶次郎の証言(第二回)も同証人等の各第一回の証言に照して盗難の可能性を全く絶無となすものとは考えられない)又本件伐木は集材した分も直接土地に接して置かれていたもので(証人古家雷三郎の証言)腐敗の可能性も存在する(証人塩谷為吉の証言)し一年位の乾燥の結果重量も容積も半減する(証人的場克男の証言)等の事情を考慮すると石数に全然変化なく従前の石数を競売までそのまま維持していたと推定することは困難である

他方において証人古家雷三郎同檜垣初市の各証言によると古家雷三郎は右競売後競落人平次義より本件伐木を買受け更にこれを檜垣初市に譲渡したものであるが昭和三十年十、十一月頃に寸検(檜垣は自動車積込古家は貨車積の際行つた)したところ二百九十五石五斗一升あつたことを認めることができる

右のごとく本件競売の際原告主張の材積の存したことは認定するに困難があるが当時少くとも右古家檜垣両証人の寸検当時に存した二百九十五石五斗一升の材積が存したことは推認するに難くないところである

次に本件松材の本件差押競売当時における価格の点であるが証人山田本三郎の証言によつて成立を認めることができる甲第六号証に同証人の証言証人保科猶次郎の証言(第一回)及び原告本人の供述を綜合すると本件山林は伐採木を搬出する方法としては索道を架設する外方法がないこと本件山林立木の伐採搬出期間は昭和二十八年九月より一ケ年の定めであるところ本件競売当時は既にその期間を経過していたため該山林の元所有者である保科猶次郎等の延期承諾を要したこと尚木材を搬出することによつて損害を蒙ることがあるべき関係土地所有者約三名に対し損害金支払の必要があつたこと保科猶次郎は当時原告以外の者が伐木を搬出する場合は損害金を請求する旨被告白根に言明していたことを認めることができる

そして差押にあたつて見積られる差押物件の価格も物件の現状の外右のごとき事情(原告に特殊な事情は除外し)をも考慮して相当とする価格によるべきであつたところ証人的場克男、同菅村助次、同塩谷為吉の各証言及び原告本人の供述によつてパルプ材用材の本件山林山もとの価格について最寄駅渡価格より出材等の経費を差引いて逆算し右結果が原告主張の価格に略等しい価格が算出されないことはないけれどもこれらの価格は前記のごとき原告以外の者が搬出にあたつて遭遇する特殊の事情を考慮した上のものであるとは認められず又右逆算の根拠となる出材等の経費も五百石余の材積を出材することを考慮に入れての額とみるべきで本件のごときそれより遙か二百石少い木材の搬出の場令にもこれによることは妥当ではない従つてこのような証拠は採用の限りではないしその他に原告主張の木材価格を証明するに足る証拠はない

しかし乍ら証人古家雷三郎同檜垣初市の各証言によると前認定のごとく古家雷三郎は本件競売直後である昭和三十年九月頃競落人平次義より本件伐木を買受けたがその代価は山元石当り三百五十円であつたこと同年十、十一月頃これを搬出したが搬出に関し関係土地所有者に補償費約八千円集材費石当り約九十円架線流し費石当り約九十円自動車賃石当り約八十円その他の経費を要したこと檜垣初市、古家雷三郎等はこれを当時北越パルプ株式会社に対して最寄駅渡にて石当りは八百八十円乃至九百円で転売し若干の利益を得たことを認めることができる

これによつて考えると本件松材はその競売当時少くとも山元石当り三百五十円の価格を有していたことは推認するに難くない右の認定に反する被告白根の本人尋問の結果は信用し難いそして他にその価格について拠るべき証拠がない限りこの価格による外はないがそうすると二百九十五石五斗一升で価格十万三千四百二十八円五十銭となり糸賀執行吏代理の見積価格二万円(四百石につき)との差は八万三千余円で後者は前者の五分の一以下であることが明かである

執行吏は有体動産の差押にあたつては差押物につき正当に価格を評価すべき義務があるのであるが証人糸賀東市の証言によると同人は執行吏代理として本件強制執行をなすにあたりこれまでにかかる伐木の差押競売の経験が全くないのに拘らず材積価額についてこれが充分な調査をしないで数量については唯原告の前主保科猶次郎より同人と山田本三郎との間の売買時における概数が五百石であつたと聴取するやこれを基本とし更に木材の内相当量腐敗しているとの自己の現認及び盗難による減少をも考慮した結果漫然と四百石と判断し他方価額についても鑑定を用うることなく唯被告白根の二万円でよいとの発言に頼りこれに自己の不確実な知識(木材石当り七十円位という漫然として記憶)を併せて判断したもので搬出費用等も数字的に算出したものではなく唯木材の相当程度の腐敗乃至変色伐採後相当期間の経過搬出期限経過による相当額の損害金の必要相当額の搬出費の入用等の諸事情をみて只管価値の非常に少いものであるとの考慮の下になされた甚漠然たる判断であることが認められるのである。結局かような不充分な方法によつて時価の五分の一以下の不当に低い評価額(見積材積四百石として石当りの価額を算出すれば五十円であるから時価の七分の一となる)を算定してなした本件差押は違法であり三万円という不当に低い価格でなした競売も亦違法と言はなければならない

次に糸賀執行吏代理の右違法執行について同人に被告白根との通謀乃至故意があつたかという点であるかその点について肯認するに足る証拠はないが過失の存することは右認定の評価の事情よりして明らかにこれを認めることができる

次に被告白根につき右糸賀執行吏代理の違法執行にあたつて執行債権者として同人と通謀してこれをなさしめたかの点であるがこの点も肯認するに足る証拠はない

次に同被告に同執行吏をしてかかる違法執行をなさしめるについて故意乃至は過失が存したかの点である

被告白根卯一郎本人尋問の結果によると同人は山林及び木材価格につき知識を有し昭和三十年三月頃パルプ材三千五百石余売却の経験もあり且つ競売の知識をも有していること本件木材の価格については糸賀執行吏代理の見積額である二万円を正当と考えるがそれは正確な計数上の根拠があるわけでなく唯本件木材の情況が集材分は皮剥不充分で腐敗鉄砲虫入各二、三割程度あり未集材分は乾燥し過ぎて屈曲して用材として使用できぬという風であつたしその搬出は保科猶次郎等土地所有者の損害要求の外背負出しによらざるを得ないその価値は薪同然という様な悪条件を考慮した上で相当であるというような漠然たるものにすぎないことを認めることができるのである

そうだとすると被告白根はその有する山林木材等の知識経験に照して少くとも前記糸賀執行吏代理の見積価額が正当なものでなく不当に廉価であることを知悉していたことを推認するに難くない而して被告白根はそのような価格の認識を有するに拘らず前記証人糸賀東市の証言により認められるように見積価額判定に際し同執行吏代理より意見を求められたのに対して四百石で二万円ならよかろうと答えたのである

このようにして被告白根は木材関係につき無知識無経験の糸賀執行吏代理が見積価額を判定するにつき不当に廉価な価格を告げて結局その正当な判定を誤らせたものであつて被告白根は相当な注意をすれば違法な競売の結果を予見し得たものと云うべきであるから少くとも過失があつたものと考える

そして被告白根の右過失は糸賀執行吏代理の前記過失と相まつて本件違法執行を結果したものと認められるから両名は共同不法行為者といわねばならない

右に認定したごとき違法執行によつて原告は少くとも前記木材の時価十万三千四百二十八円五十銭と本件競売代金三万円との差額七万三千四百二十八円五十銭の損害(正当な競売が行われた場合において得べかりし利益の喪失による損害)を蒙つたことが明かである

尚原告は本件競売期日が書留郵便でなく普通郵便で通知され而も該通知到達後競売期日迄に三日の期間が存したに過ぎないから該通知手続は違法であると主張するが成立に争のない甲第一号証の一、二及び原告本人の供述によると本件競売期日を記載した差押調書謄本は昭和三十年八月二十四日頃普通郵便をもつて原告方に送達されたことを認めることができるがこの通知の手続が違法であつてもこれが原告の蒙つた損害との間に因果関係(相当)が存する点についてはこれを認めるに足る証拠がないし又原告主張のごとく差押について立会人が存しなかつたとの点について考えるにたとえそのような事実があつたとしても本件差押においては立会人は必しも必要とかは解せられないからこの点で本件差押は違法であるとは云えずこの点に関する原告の主張は採用の限りではないところで執行吏は強制執行権という国の公権力行使の権限を与えられた国の機関であるから国家賠償法上公務員としてその過失による損害の賠償は国においてその責に任ずべきものと解する

然らば被告等は民法第七百十九条によつて連帯して前記原告の蒙つた損害金七万三千四百二十八円五十銭及びこれに対する不法行為たる本件競落の翌日である昭和三十年八月二十八日以降民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務があるものであつてこれが支払を求める限度において原告の本訴請求を正当として認容すべくその余の部分は失当として棄却し訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条、第九十二条及び第九十三条を仮執行の宣言について同法第百九十六条を各適用して主文のとおり判決する

(裁判官 藤原吉備彦)

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